昔、BCLというのが流行った。中学時代だと思う。短波ラジオで海外からの日本語放送などを聴き、その受信状況のレポートを放送局に送るとベリカードと呼ばれる受信確認証が送られてくる。そのベリカードを集める趣味である。今から思うと、BCLに最適な短波ラジオを売り込むための家電メーカーの策略ではないかとも思える。実際、当時、ダブルスーパーヘテロダイン方式とかのラジオが販売され、長いリード線を接続してアンテナにすると、遠くの放送局が受信できたりしたものだ。高性能のラジオと言ってもチューニングはアナログで、ダイヤルを手回しして選局する。今のようにデジタル表示で周波数が表示されるものはなかった。あったとしても無線機などの高級機だったと思われる。そんなわけで、聞こえるか聞こえないかわからないような日本から遠く離れた微弱な電波を、ダイヤルを微妙に動かしながら受信しようと頑張っていた。懐かしい。自分の愛機はNationalの「クーガ№7」。中波用のバーアンテナが回転するのが売り。そこに惹かれて購入したが、短波を聴くにはあまり御利益のないラジオだった。同じくらいの価格のSonyの「スカイセンサー」を買っておけば良かった。
イギリス・ロンドンのBBC、オーストラリア・メルボルンのABC、エクアドルやドイツからの放送もあった。中には聴きやすい中波の中国の北京放送、北朝鮮のピョンヤン放送、ロシアのモスクワ放送などもあった。ベリカードは同じ放送局でも何種類かあるので、異なるカードをゲットすべくレポートを書き続けていた。海外から郵便物が届くのは嬉しいものだった。
なお、ベリカードは海外の放送局だけでなく、日本国内の放送局でも発行している。地元のラジオ局はもちろん、他県の放送局やテレビ局にもレポートを送ってベリカードを集めていた。標準電波であるJJYのカードもゲットした。
BCLに関する雑誌等が販売されていたと思うが、中学生には手が出ず、情報はもっぱら電器屋さんのラジオのカタログ等で集めていた。毎日のように電器屋に行っては新しいカタログが入っていないか確認していた。電器屋のおばさんには「たまには何か買ってよ」などと嫌味を言われたが、そんなことを気にすることはなかった。
海外からの放送でよく聞こえる放送局にVOAがあった。確か在日米軍向けの放送だったように思う。英語放送なので、英語でレポートを書かないといけないと思い、辞書を引きながら書いた記憶がある。その時はズルで早退したように記憶している。VOAから返事が来た時はとても嬉しかった。
一生懸命に集めたベリカードだが、今は所在不明である。前の家に残っているとは思うのだが。いずれ探してみたい。今でもベリカードを集めている人はいると思うのだが、デジタルで選局できるようになっては面白味は半減か。